阪急阪神百貨店勤務 松澤康之さんーイノベーション・キュレーター塾生インタビュー
卒塾5期生のインタビューにより、塾の魅力と塾生の皆さんに起こった変化についてご紹介します。
今回は、阪急阪神百貨店にお勤めの松澤康之さん。いろいろと試行錯誤されながら、着実に変化があり、行動も始められています。自分らしい生き方とは、自分の周りにある多様性とは、塾期間中に思考を深めながら、トライし続けた塾期間中を振り返っていただき、塾期間中のこと、卒塾に向けてのことも含めて語っていただきました。
Q:なぜ、イノベーション・キュレーター塾に参加しようと思われたのですか?
松澤:新聞や書店で「SDGs」や「CSR」、「ESG」という言葉をよく見かけるようになっていました。また、ちょうど同じ頃私が所属する会社の部署でも社会課題を研究し始めていたり、店舗でも社会課題をテーマにイベントを実施していたりと、社内でも社会課題に取組む機運が高まっていました。もっと知識を積み上げたい、体系的に学んで会社での取組に活かしたいと思い、塾に参加しました。以前は、社会課題解決は企業活動とは離れたところ、社会貢献としてやっていくものだと思っていました。そこにどうビジネスを掛け合わせるか、利益・評判・その他でどう企業利益に貢献するようにするか、そのあたりの“企業にとっての持続可能性の発見”も、自分の中での課題でしたね。
Q:実際参加されていかがでしたか?
松澤:知識を学び、会社への還元は一定程度は出来たと思います。具体的には、得た知識を社内勉強会で共有したり、自部門の取り組みに反映させたり、出会った講師を社内他部署メンバーに紹介したりと、当初思っていた以上の成果があったと感じています。
また、自分の中での気付きも多々ありました。様々なゲストスピーカーのお話から、自分がこれまでイメージしていた社会課題の解決の切り口への視野が狭かったこと、「こういうことも社会課題の解決になるんだ」という新たな視点を得ました。
さらには、当初は会社の枠組みの中だけで考えていたのですが、「そもそも松澤個人として“ありたい未来”は何なのか?」と問いかけられ、自分のことを深く内省していくきっかけにもなりました。自分を振り返り、自分の想いの根本を探っていくことはとても大変でしたが、入塾前には想像していなかった自分の想いの発見・気付きにも繫がり、充実した塾期間を過ごせたと感じています。
Q:ゲストスピーカーは多様な講師で構成されていましたが、印象に残っていることを教えてください。
松澤:毎回興味深かったですが、特に印象に残った方はお二方です。1人目は、後期3月に受講したADDress佐別当さんの取組みです。キュレーター塾のコンセプトに四方良しがありますよね。空き家を改装し宿泊を可能にする、家守を置くことで交流を生み出し、地域の雇用増にもつなげる、という佐別当さんの取組は、まさに四方良しだと思いました。私も衰退気味の商店街で育ち空き家・空き店舗には課題意識がありましたし、そういう意味で社会課題が遠い世界の存在から身近にもたくさんあると感じたきっかけの回でした。ADDressに転職したいなと思ったくらいです(笑)。このあたりからようやく実践ワークの見方が俯瞰的になってきたような気がします。
2人目は、ユナイテッドピープル関根さんの取組です。いくら正しいことを言っても、自分の身近なことでなければ活動の意義は伝わらないのが社会課題です。そういう意味で、「映画」という手段に落とし込んだ関根さんの手法と、ストロングルーツ(自分の思いの原体験)の強烈さが心に残りました。
Q:塾期間中に,取り組まれた実践ワークはどんなことでしたか?一番ハードルに感じていたことはありましたか?
松澤:当初は会社での取り組みを実践ワークにし、後半はそれに加えて、人生で大切にしたい自分のマイプロジェクト探しをしていました。「会社」という枠を考えながら、もう一方でその枠を壊し「人生」という俯瞰した視点に転換する、この作業に非常に苦戦しました。私は元々家業のある家に育ったので、会社か家業か、という二元論で考えていました。しかし、どちらを選んでも私は私で、根底には共通する想いがありそうだということに、様々なゲストスピーカーの話や他の塾生との対話の中で次第に気付いていきました。今は会社や家業のどちらか、ではなく、両方を通して「しなやかで複線化した生き方ができる世の中づくり」を志向するようになっています。
Q:イノベーション・キュレーター塾を受講する中で,どんな気づきがありましたか。
松澤:他の塾生の話を聞いていて、悩みややりたいことはもちろん人それぞれなんですが、俯瞰的・抽象的にしていくことでけっこう似通ってくるな、と感じるようになりました。そういう意味で、他の塾生との対話は自身のプロジェクトを進める上でもとても大切ですね。
5月の塾で卒塾生の田中慎さんに入ってもらったグループワークで、田中さん自身が塾生時代、マイプロが分からなくなってよくフェイスブックに考えを投稿していた、と伺いました。私もマイプロジェクト迷子になっていたので、いったん生き方から考え直し、ドキドキしながら今の塾生同士のグループ(※)に投げてみたんです。そうすると、塾生みんながたくさんのフィードバックをくれて、さらに気付きが広がりました。
※塾期間中はfacebookでグループページを使って、塾の連絡以外にもお互いのマイプロジェクトの進行状況などを塾生同士で自由に投稿してもらい交流する場があります。
それから、塾の後半で初めて娘が生まれたんですが、これも大きかった。上辺だけでなく、自分はどんな人間なのか。10年後30年後、娘が生きていく社会をどうしていきたいのか。そう考えるようになりました。
こうして、仲間との対話や家庭環境の変化を経て、自分が根底に抱える「社会に対する想い」のようなものがハッキリしてきましたね。
Q:そんな塾期間の間で、どんな未来を実現したいと思うようになりましたか?
松澤:塾の途中で、自分の中には、生き方をひとつに絞ってしまうことへの怖さがあることに気が付きました。それは、自分の出自や育ってきた家庭環境から無意識にそう考えるようになっていたのですが、生きる選択肢はたくさんあるし、もっと自由に選べていい。ひとつに絞らなくたっていいと思います。人それぞれ道を自由に選べる、一度選んでも道を自由に変えられる、そもそもいくつかの道を同時に選ぶこともできる、そんな世の中になったら面白いですよね。そこから「しなやかで複線化した生き方ができる世の中づくり」をマイプロとして志向するようになりました。私のような家業持ちではなくても、サラリーマンでもママでも主婦でも学生でもおじいちゃんおばあちゃんでも、これでいいのかなとか、こんな生き方窮屈だなとか、もっとこうしたかった!とか、同じような悩みを持つ方も多いのではないかと思います。多様な選択肢を自由に選べる、しなやかで複線化した未来を生きられたら、生きやすくなると思いませんか?
Q:ズバリ、どんな人にイノベーション・キュレーター塾の受講を勧めたいですか?
松澤:自分のモチベーションを持て余している人、でしょうか。何かやりたい、想いはあるけど何をしたらいいかわからない。そんな眠れる獅子に受講して頂き、モチベーションの火種に着火して欲しいです。社会課題に興味がなくても、何かに熱中したいなとか、会社と家の往復だけでつまらないなと思っている人にこそオススメしたいですね。どこかでお会いできるのを楽しみにしていますよ!
お話を伺った方:松澤康之 さん
株式会社阪急阪神百貨店企画室企画部
イノベーション・キュレーター塾 第五期生
(お役職はインタビュー時の肩書き記載しています)