ワークライフバランスコンサルタント瀧井智美さん―イノベーション・キュレーター塾生インタビュー
現在、第3期生を募集中のイノベーション・キュレーター塾。
こちらでは、今まで参加された塾生へのインタビューにより、塾の魅力と、塾生のみなさんに起こった変化についてご紹介します。
今回のインタビューは、株式会社ICBを経営し、キャリア開発事業、組織活性化支援事業を営む瀧井智美さんにお聞きしました。瀧井さんは、ご主人と3人の娘さんの家族との時間を大切にしながら、会社経営以外にも関西でワークライフバランスを推進するWLBC関西の代表として、京都ウィメンズベース女性活躍・WLB推進事業や京都ウィメンズベースアカデミー事業などのプロジェクトを担当し、企業や行政における職場の風土改革や、働き方の見直しに力を注いでいます。
この塾で学ぶことで、一人一人が見えている世界の狭さにあらためて気づき、だからこそ協力し合える塾の仲間が見つかり、今後のビジネス展開のヒントが得られたそうです。
いまの社会になんとなく違和感をもっていて、何かを変えていきたいと思っているけれど自分達だけでは行き詰まりを感じている方。瀧井さんのインタビューを読んで、未来への一歩をイノベーション・キュレーター塾で踏み出しませんか?
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■塾に参加したきっかけ「リーフレットの内容に共感したから」
田中: まず、塾に参加したきっかけを教えていただけますか?
瀧井: 去年の夏、熊本県の公務員の知り合いが登壇するということで、京都市のソーシャルイノベーションサミットに参加したんです。そのようなきっかけがあってイノベーション・キュレーター塾のリーフレットを目にしました。リーフレットに書かれていたのは、「社会的課題の表出」と「ビジネスモデルの転換期」において、社会的課題を俯瞰し、その本質を掴む力を持ち、経営者に伴走できる「イノベーション・キュレーター」。そこに書かれている図が、私のワークライフバランスの考え方に近く、とても関心を持ちました。
瀧井: ワークライフバランスの取り組みは徐々に広がってきていますが、もっと加速していきたいと思っていた頃。一企業だけに訴えていてもなかなか社会は変わりません。何をすればもっと加速するのか。京都は“京都流議定書”や“これからの1000年を紡ぐ企業認定”、“京都市ソーシャルイノベーション研究所”など、組織の枠を超えて連携して未来を考えるような先進的な取り組みが進んでいるので、経営者や企業に対して提供できる情報が見つかるのではと感じ、塾に申し込みました。
田中: 誰かの紹介というのではなく、まったく知り合いがいない中で参加されたのですね。
瀧井: そうですね。毎年一つは新しいことを学ぶようにしているんです。ワークショップデザイナーの講座で学んだり、キャリア教育コーディネーターの講座で学んだり、イノベーションファシリテーターやダイバーシティファシリテーターなども。
自分と関係が近い人が集まる場では、みんな自分と視点が近いんですよね。そのような場も大切ですが、学びの観点からは、視点が違う人が集まる場の方が多くの気づきを得ることができる。だからあえて知り合いがいないところに行き、新たな視点を学び続けたいと思っています。
■塾での気づき・入塾して「自分が見えている世界の狭さにあらためて気づいた」
田中: 実際に入塾してみて、様々な分野のゲストから話を聞いてどうでしたか?
瀧井: 今までも、消費者教育のワークショップでファシリテーターをする機会があり、様々な関係者から消費者があまり知らない話を聞くこともありましたが、キュレーター塾で塾長のラナプラザの話や、大和総研の河口真理子さんの話などを聞いて、自分が見えている世界は狭いことにあらためて気づきました。自分が見えていないことで大切なことはたくさんあります。
何かの専門性をもってクライアントに価値を届けている事業者はたくさんいますが、そのクライアントの先まで見えている事業者は少ないのではないでしょうか。クライアントの先にいる取引先や社会、環境に悪い影響を与えていたとしても、そこまではなかなか目が向かないものです。塾での経験を活かして、私もそのような気づきを提供する側になりたいと思うようになりました。
田中: 塾ではゲストの話を聞いて視野を広げるとともに、それぞれのマイプロジェクトをブラッシュアップすることを大切にしています。マイプロジェクトを通じて見えてきたことはありますか?
瀧井: それぞれのマイプロジェクトを深めていくフォローアップ会の機会もあるのですが、今思えば最初は少し力が入りすぎていたように思います。ゲストの話を聞いているうちに、自分が何か社会に対して憤りを感じていることに新しく取り組まないといけないのではないかと考えていたので。
でも、今では「もっと身近なことで感じる違和感」でいいんだと気がつきました。だから私の場合、「実現したい未来」に対してマイプロジェクトは今の仕事の延長線上にあるものでいいのだと考えると気が楽になりました。いま、京都府の取り組みで企業1社だけでは解決できない課題に対して、組織の枠を超えて解決していくプロジェクトを新しく受託しました。ワークライフバランスのお話をする中で、中小企業は規模が小さく、社内だけではロールモデルとなる女性がいないことも多い。だから社外のロールモデルとなる女性をメンターとしてマッチングする取り組みをはじめました。1社だけではどうしようもないことを業界全体、または業界を超えて課題解決していくラボも運営します。成果が出るのは卒塾後になりますが、この塾を通じて組織の枠を超えて「実現したい未来」に取り組むことの大切さをあらためて感じました。
■今後の挑戦・実現したい未来「組織の枠を超えて課題解決をしていくこと」
田中: 塾を通じて多くの気づきを得られているのですね。そんな瀧井さんの今後の挑戦は何ですか?
瀧井: 組織の枠を超えて課題解決をしていくことに挑戦したいと考えています。組織の形って今の時代に合っていないのではないかと感じることが多い。今代表をやっている団体も法人にはしたくないという考えをもとにやってきました。案件を受ければその中でメンバーを募り、プロジェクトベースで組織をつくっていく。任意団体であっても組織がしっかりしていれば、自治体の案件もほとんど受けることができます。まだまだ思ったとおりにいかないこともありますが、もっと組織の形を進化させていきたい。そして、自分の団体で実際に試してみたことを社会に伝えていきたい。自分たちの枠を超えて未来をつくっていく。それが私の今後の挑戦です。
田中: とても興味深い挑戦ですね!そうした挑戦につながった瀧井さんが感じた「身近な違和感」とはどんなことでしたか?
瀧井: 昔、起業支援の仕事をしていたとき、いきなり起業するのは不安なので、まず起業したての会社に勤めた方がいらっしゃいました。でも、入社した途端に今までのように力を発揮できなくなってしまったんです。本当だったら新しい人が入ることで事業がかけ算になるはずだったのにそうはならなかった。どうしてそうなったのか考えたとき、私は「雇う・雇われる」の関係に問題があるのではないかと考えました。雇われていなければ自然にやりたいことにチャレンジできていたものが、雇われると頑張ってやらなければならない。そう考えると「法人」という組織は、これからの仕事のやり方に合っていないのかもしれません。それじゃあ新しい組織って何だろう?プロジェクトベースの組織だからできることがある。そのような新しい組織の形が、その人らしく生きる社会につながるのではないかと感じています。
田中: 瀧井さんの今後の挑戦が、ワークライフバランスを中心としたマイプロジェクト通じて「実現したい未来」につながっているのですね。
瀧井: ワークライフバランスの取り組みで情報通信業や製造業の経営者に多くお会いする機会があります。その中で、働き方を改善したいと考えている経営者はたくさんいます。でも、1社の取り組みだけでは、業界全体の考え方が変わらない。そのために業界の枠を超えてパイオニアとなる企業が集まり、情報発信をしていくことも必要です。顧客、業界、社会全体にとっていい取り組みをする会社の情報発信を手助けしていきたい。どうせやるなら幸せになることをやっていきたいですね。
■おすすめしたい人「今の社会に違和感をもっている人」
田中: これからの挑戦が楽しみですね!第3期イノベーション・キュレーター塾の募集が開始しましたが、どんな人に塾をおすすめしたいですか?
瀧井: 今の社会に何かしら違和感をもっている人や視野を広げたい人。たくさんいると思うんです。私のところにも教育の現場から問い合わせがあります。自分の業界だけでは限界を感じている。外部の視点を借りて、視野を広げて進めていきたいというニーズはあります。
何かしら変えていきたい。でも行き詰まっている。自分だけではできないことをサポートしてほしい。そのような方々にイノベーション・キュレーターの視点がとても役に立つのではないでしょうか。
また、塾にはいろんな仕事をされている方が集まるので、異なる価値観をもつ人に出会うことができます。出会うことでチャンスが広がる。イノベーション・キュレーターというキーワードで集まってくる仲間が得られるというのがとても大きいと思います。塾に通っている期間はスタート期間。その後もつながる関係こそが、普通の講演会に参加しているだけでは得ることができない塾ならではのメリットではないでしょうか。
田中: これからのますますのご活躍を期待しています!ありがとうございました!
瀧井さんは、四つ葉のマークが好きで手帳にシールを貼ったり、プレゼン資料で使ったりしています。この四つ葉は、人が持つ「4つの責任」を意味しているとのこと。責任と聞くと重いのですが、「自分の人生、仕事、家族、社会の4つを幸せにする責任」。自分の人生をまず一番に幸せにすること。でもそれだけではいけないことを表す四つ葉のマーク。
『娘が四つ葉のシールを見つけてプレゼントしてくれるんです。』と話す瀧井さんは、とても優しい表情をされていて、多くの人が瀧井さんに魅力を感じる理由がインタビューを通じて良く分かりました。
今後の挑戦を楽しみにしています!
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