より良い未来への実践を共有する。「イノベーション・キュレーター塾」卒業生たちが、夜な夜な集まる「実践研究会」に潜入!

SILKでは、主催する「イノベーション・キュレーター塾(以下キュレーター塾)」を通じて、社会的課題を解決するビジネスの伴走者となる人材育成に取り組んでいます。2017年6月現在、1期生の16名がすでに卒塾。加えて、今まさにプログラムの終盤に差し掛かっている15名の2期生が、仲間と共に学びを深めています。そして今年の9月から新たに始まる第3期の募集もいよいよスタートしました。

「キュレーター塾」に通うことで、どんな学びが得られるのか、卒業生たちはそれぞれが学びを実践に活かせているのか、気になる方も多いはず。そこで今回は、卒業生たちが夜な夜な集まっているという「実践研究会」に潜入。「実践研究会」は、塾生が自身の取組の進捗の共有や意見交換を行う、塾生が自主的に開催している会です。卒業生たちの生の声を、一部お届けします。

より良い未来への実践を共有する。「イノベーション・キュレーター塾」卒業生たちが、夜な夜な集まる「実践研究会」に潜入!

実践研究会が開かれたのは、京都市中京区にある大正三年に築造された京町家イベントスペース「ボンジュール現代文明」。

「キュレーター塾」塾長の髙津玉枝さん、第1期生から「京都信用金庫」に勤める満島さん、高齢者住宅研究所で研究員をされている絹川さん、中小企業診断士として活動する阪本さん、同じく中小企業診断士で「ボンジュール現代文明」主宰の松下さん、IoTビジネスを展開する企業に勤める村上さん、卒業後にSILKでイノベーション・コーディネーターとしての顔も持つようになった中小企業診断士の田中さんが参加。

さらに2期生からは、茅葺き屋根修復の事業を行う企業の経営管理担当をしながら、中小企業診断士としても活躍する石井さん、「京都生協」の事業戦略室に勤める伊倉さんが駆けつけ、和やかな雰囲気の中、「実践研究会」はスタート。

卒業生が卒塾後にそれぞれの舞台で、持続可能な社会の構築に向けて取り組んでいること、または実践を深めていくときに弊害となっていること、悩んでいることなどを赤裸々に語り合いました。

若手職員向けに「共有価値営業」の勉強会を開催

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「京都信用金庫」の満島さんは、以前ご紹介したインタビューで、地域から「京都信用金庫がなければ困ると言われる関係をつくりたい」と話し、社内でまだ一般的ではないソーシャルビジネスへの創業支援を加速するために、社内啓蒙に取り組んでいくと宣言。

自社の若手営業職員向けの研修で、ソーシャルビジネスの存在や価値を紹介したり、他県の行政・金融機関に対し、ソーシャルビジネス融資制度の説明をして回ったりと、社内外の200人以上に、ビジネスに対する社会価値の必要性を伝えているそう。

満島さん:銀行って、本当に正しいことを言っても、「きれいごと」や「青臭い話」とされてしまって、通用しない世界だったりするんです。だからこそ、僕は青臭いことを言い続けていこうと思っています。

そう力強く話す満島さんは今後、法人営業職に配属されたての若手職員30人を集めて、全5回の勉強会「企業金融グローイングスクール」を開催予定。メンターを5名配置して、財務中心ではない学びの場をつくり、「共通価値営業とは何かを知る」「堂々と社長と対話できるようになる」という目標に向けて取り組んでいくそうです。

満島さん:最初が大事だと思うんです。「貸出し金を増やすことが営業で一番大事や」という営業マンになるのか、「企業さんの想いに寄り添うことを優先するんや」という営業マンになるのか。その初期教育がなされていれば、その後がブレずに済むはず。そして、いずれは2,000人いる従業員の7割に、その意識を持ってもらうことを目指していきたいと思っています。

企業の働き方改革を目指し、実践と分析を積み重ねる

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続けてお話しされた阪本純子さんは、中小企業診断士として自らの事業を行いながら、販促支援会社の人事担当として月90時間の短時間正社員として働いていた方。

以前のインタビューでは、「さまざまな立場の人がさまざまな人生の時期を乗り越え、長く働くことができ、成果を出せる場・企業づくりに取り組みたい」と話されていました。卒業後は、中小企業診断士として創業支援やプロジェクト支援に携わった際に、財務だけでなく、顧客に対する企業価値がどこにあるのかを問い、「10年後にどうありたいか」といった未来に向けた対話を8社ほどと行ってきたそうです。

人事を担当する所属会社においては、社員に向けた週一回のメールマガジンを通じて、多様な働き方の事例などを発信。社外に対しても、自社のシニア・子育て社員の活躍を取り上げた情報をリリースするなど、対面と発信の両方で積極的にアプローチを図ってきました。

しかし、継続的に伝えることはできても、その意識がなかなか社内風土や企業の制度にまで落とし込まれないことに、難しさも感じているといいます。

阪本さん:経営者の方が企業の本質に立ち戻り、社員たちがそれぞれ、のびのびと働けるよう社内の改革を進めたいと思っても、その他の経営陣を説得しきれないなど、なかなか実際の変化を起こすところまで到達できない難しさを感じています。それをどうすればできるようになるのか、悩んでいるというのが正直なところです。

そして、企業の風土を変えていくには、経営者側へのアプローチに加えて、従業員側の自立を促すアプローチの両方が必要だと感じ、「今後はその方法を考え、実践していきたい」と話してくれました。

 自らのスタンスを表明して掴めてきた手応え

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税理士であり、中小企業診断士でもある田中さんは、以前のインタビューで、「世の中にたくさんある選択肢がもっとはっきりと見えるよう、彩りある未来をつくりたい」と話されていました。

企業コンサルティングも行う田中さんは卒業後、クライアントに対して、「このビジネスを通じてどういった社会を実現したいのか?」と問うことを始め、起業家向けのセミナーなどでもソーシャル・イノベーションの重要性を伝えるなど、のべ200人ほどに対して社会価値の啓蒙を行ってきました。「でも、最初は全く届かなかった(笑)」と田中さんは笑います。

田中さん:でも、ちょうど1年ほど前、ある人をSILKの集まりにお誘いした時はいい反応ではなかったのですが、先日改めて連絡をくれたことがあったり、少しずついい手応えを得られています。

その人にとって、その情報が必要になるタイミングというのがあるんだなと思うんです。もちろん、伝えても届かない人はいるけれど、その瞬間に届くか届かないかはひとまず置いておいて、伝えることに意味があると思うし、このスタンスで生きているという宣言をすることに、とても価値を感じています。

言い方は違えど、「社会のより良い変革のための仕事しかしない」と、周囲に公表して回った田中さんに対し、仕事を出さなくなるクライアントもあったといいます。

田中さん:卒業して1年が経ちますが、確かに谷間の時期もありました。でも、自分のスタンスを表明したからこそ、新しく声をかけてくれるところもだんだんと増えてきました。きちんと手間をかけて仕事をしたいと思うので、価格も高めに設定していますが、それでも価値を理解していただいて、指名していただけるようにもなってきて。なくなる仕事もあったんですが、よかったと思っています。

そして、卒業して1年が経ち、田中さんはSILKのイノベーション・コーディネーターに就任。今後もあらゆる方法、あらゆる場面で、挑戦する人のための環境を整えていきたいと、その想いを語ってくれました。

その後も、それぞれの実践結果を発表し合い、髙津さんからの厳しくも優しい、愛のあるツッコミも入りながら、夜遅くまで続けられた「実践研究会」。

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2期生の石井さんと伊倉さんは、1期生たちの姿に自らのその後を重ね、「それぞれ業界の異なるメンバーが、より良い未来をつくりだそうと、卒業後も刺激しあっている姿を見て心強く思いましたし、改めてがんばろうと思いました」と、当人たちも刺激を受けていたようでした。

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さて、いかがだったでしょうか? この記事を読んだあなたも、きっと「未来をより良くしたい」「心から正しいと思える方法でビジネスを展開したい」などと思っている一人のはず。

今年の9月から始まる第3期「イノベーション・キュレーター塾」の募集は、もう始まっています。志を友にする仲間と出会い、持続可能な社会の構築に向けて、その歩みを進めてみませんか? より良い未来は、必ずどこかの誰かが踏み出した、その一歩から始まるのですから。

ライター/赤司研介(SILK エディター・ライター)