アフリカドッグス 代表 中須俊治さんーイノベーション・キュレーター塾生インタビュー
卒塾4期生にお話を伺い、塾の魅力と塾生の方々に起こった変化をご紹介します。
1人目は、キュレーター塾受講中にアフリカのトーゴ共和国と京都の技術をかけ合わせたアパレル事業を起業された、中須 俊治さん。入塾時は、新たな価値を生み出す事業を構築するため、前職の金融機関を退職されたばかりでした。9月に入塾した後、トーゴ共和国で市場調査を実施、10月に日本で会社設立、そして11月には現地法人を設立します。受講中に様々なトライ&エラーを重ね、京都の染め職人とコラボレーションした商品開発、展示会への出展など驚異的なスピードで事業を進めていき、メディアにも多数取り上げられています。
Q:なぜ、イノベーション・キュレーター塾に参加しようと思われたのですか?
中須:「イノベーション・キュレーター塾」なる9割がカタカナの怪しげなものを知ったのは、ぼくがまだ前職の京都信用金庫に勤めているときでした。会社の上司であり、1期生であった満島さんに紹介いただきました。起業しようと考えていた矢先、満島さんに「だまされたと思って来て」と、いかにも怪しい勧誘の仕方で説明会に連れて行ってもらいました。変な契約をさせられないように、印鑑は自宅に置いて会場へ向かったのを覚えています。でもそこには、本気で世の中をよくしたいと、鬼気迫るほどに訴える人がいました。
その雰囲気を見て、その場で入塾を決めました。ぼくはそれまでの人生で塾には通ったことがありませんでした。でも起業するにあたり、何か学ばないといけないと思っていました。目的は、会社が目指すべき方向性や、社会で果たすべき役割をクリアにしていくこと。この塾でビジョンをブラッシュアップし、事業に活かしていきたいと思って参加しました。
Q:塾の受講中に取り組まれたマイプロジェクトの内容と、そこに込められた思いは?
中須:ぼくがキュレーター塾で取り組んだマイプロジェクトは、「地域に根差したものづくりを通して、アフリカ最貧国での社会的インパクトを最大化する」というものでした。学生時代、ぼくは休学してアフリカ地域を旅していました。日本の生きづらさから逃れて、辿り着いたのがアフリカ大陸でした。中でもぼくの人生を大きく変えてくれたのは、トーゴ共和国という国でした。今ぼくがトーゴ共和国で会社をつくっているのも、学生時代の体験があったからです。
初めて訪れたその異国の地は刺激的でした。メディアの情報、あるいはセミナーや勉強会、本で得られる情報とは、全然違うレベルの体験。学生時代には最高の贅沢でした。そこでぼくはコミュニティや地域の豊かさを知り、嬉しいときには笑って、悲しいときには泣くことの尊さを知りました。そんな時間の中で、ある友人と出会い、ぼくはまたアフリカへ帰ってくると約束しました。地域の在り方は豊かな一方で、マイノリティの置かれている立場が、あまりに凄惨だったからです。
そうした経験から、何かぼくなりの切り口で、アフリカ最貧国であるトーゴ共和国に社会的インパクトをもたらす方法を模索したいと思いました。
Q:イノベーション・キュレーター塾を受講する中で、どんな気づきがありましたか。また、その気づきにより、当初想定していたマイプロジェクトは現在どのように変化しましたか?
中須:気づきを一つだけ挙げるとすれば、「このままじゃヤバい」ということです。ぼくが生まれてからずっと、このヤバい状況は続いてきたのですが、改めてヤバいことに気づきました。このままのペースじゃ遅すぎる。前職の京都信用金庫を退職してから、もうすぐ2年が経ちますが、何もできていません。ぼくたちの事業はトーゴ共和国のアフリカ布(コットン)業界と京都の職人業界に課題を設定していますが、その課題を解決していくのに、このペースではあまりに遅すぎます。
なので今、よりスピード感をもって臨めるように、事業を整理しています。現在のマイプロジェクトは「世界各地の伝統工芸を繋いで相互理解の機会を増やし、みんなが笑って過ごせる世界を実現する」(2020年6月時点)に変化しています。さらに、実現に至るまでのプロセスを整理することで、巻き込んでいかないといけない人や組織をクリアにしています。これらを考える中で、何に自分たちは価値をおいていて、これからどうしたいのかが、より明確になりました。おかげで今、協力・提携していただける事業者さんが飛躍的に増えています。
Q:現在の取組についてご紹介してください。また、創りたい未来や生き方について語ってください。
中須:先日、ぼくたちの会社は初めてのインターン生を受け入れることになって(しかも3人も!)、今はインターン生と仕事をつくっています。ECショップの充実を図り、ファッション小物や雑貨の販売と本の出版イベントを連動させる取組を始めていこうと急ピッチで準備しています。また、Z世代と呼ばれる19歳のインターン生と対談イベントを企画したり、「国際協力×笑い(ユーモア)」のようなユニークな文脈でのプロジェクトも始動させようとしています。
また、このコロナ禍が生活を見つめ直すきっかけになったので、「近代的物々交換のすゝめ」というオンラインコミュニティを立ち上げ、より顔のみえる関係性のなかで生活を再構築していこうとしています。ぼくたちの会社がある京都は、グローバル化したことにより大打撃を受けました。一方、現地法人をおくアフリカ・トーゴ共和国のコミュニティは、うまくローカライズされていたため、それほど影響を受けませんでした。そのことにヒントを得て、物々交換を現代版にアップデートした取組をしようと考えています。色んなアイディアを出して、実践(実戦)していくのは、生き方のなかで大切にしていきたい姿勢の一つです。
Q:どんな人にイノベーション・キュレーター塾の受講を勧めたいですか。
中須:なんとなく満たされない気持ちをもっている人に受講してほしいです。たぶん、その満たされない気持ちは、なにかモヤモヤしていることがあったり、それをなんとかしたいと思っているけど、何をしていいかわからないループに入り込んでしまっていると思うのです。イノベーション・キュレーター塾は答えを教えてくれるわけではないですが、その探し方のヒントを掴めるかもしれません。
今ぼくが感じているのは「挑戦が人生を豊かにしてくれる」ということです。金融機関を退職して、アフリカ大陸を舞台に事業をつくっていますが、あきらかに人生が豊かになっています。決断して挑戦すると、人生は豊かになる。今のぼくは色んな人の背中を押せるので、背中を押されたい人にも受講してほしいです。そのときはオブザーバーで参加させていただきますので!
中須さんは、ブログやnote等で近況をどんどん発信しています。是非以下のリンク先も合わせてご覧ください。
・note https://note.com/toshiharu_nakasu
・トシハるメモリアル http://blog.livedoor.jp/nakasu_toshiharu/
・アントレアフリカ http://entre-africa.jp/author/toshiharu_nakasu
・著書『Go to Togo 一着の服を旅してつくる』(烽火書房)
・2020年4月30日出版 https://amzn.to/2YO1dQZ
お話を伺った方:中須 俊治 さん
アフリカドッグス 代表 / イノベーション・キュレーター塾 第四期生
日本とトーゴ共和国を往復し、エウェ族と京都の職人の染色を重ねて商品を開発中。大学在学中に単身アフリカへ渡航し、ラジオ局のジャーナリストとして番組制作に携わる。大卒後、京都信用金庫に入社。嵐山地域で営業を担当し後、独立・起業。
(役職はインタビュー時の肩書き記載しています)