一歩踏み出すことがどれだけ大変かを知っているからこそ、伴走者として寄り添える|イノベーション・キュレーター塾座談会[後編]
卒塾生の島田さん・南部さん・米丸さん、そして運営スタッフの川勝・宮原の5人に髙津塾長が問いかけ、イノベーション・キュレーター塾の価値を改めて言語化する座談会。前編では、塾生の方々から「自分の発する言葉には思ってる以上に力があると気づきました」「人ってこんな風に自分で考えられるんやって驚いたんです」「一歩踏み出して行動するってことを経験できた」と、力強い言葉を聞かせていただきました。
社会課題を俯瞰する視点を身につければ、壁を超えていく力になるはず
── 運営側の2人はイノベーション・キュレーター塾をどんな人に勧めたいですか?
川勝:起業準備中の人。周りが協力してくれるので、取組がきっと加速します!次に、リーダーシップに悩んでいる人。多様な塾生と一緒に学ぶ中で、お互いを尊重することや、それぞれが得意なことを担ってお互いに助け合うことを経験できるので、意識が変わるんじゃないかと思います。あとは熱くなれる何かを求めている人にもぜひ来てほしいです。本当は何がやりたいんだろうって、立ち止まって考えるきっかけになるので。
宮原:僕も島田さんと同じで、自分の後輩たちに勧めたいですね。新しい取組に挑戦したいと考えている若手職員が色々な部署にいるのですが、思いがあってもなかなか組織の壁を突破できないという現実があります。かたい組織なので、上の世代の意識が変わるのは簡単ではないと私自身も感じていて。若い人たちが思いを持って動いてくれるというのは心強いです。実際に行動を起こしている人もいれば、色々な場に顔を出すものの、自分に何ができるのかまだわからないという人もいます。彼・彼女たちが社会課題を俯瞰する視点を身につければ、壁を超えていく力になるはず。
── 「俯瞰する」や「視座を高くする」という言葉が塾ではよく出てきましたね。宮原さんはその違いをどう捉えていますか?
宮原:違い……難しいですね……。「俯瞰する」は、上から全体を眺めて、見えていなかったものまで見ようとすること。さっきのSDGsの話のように、わかった気になっていたけど実は本質が見えていなかったっていうことは多々あるので。「視座を高くする」というと、上からというより、遠くを見るイメージの方が近いかもしれません。身近なところだけじゃなくて、その向こうにある「まち」や「社会」みたいな大きなところへの影響まで考えられるようになるのかな。
本気でぶつかりにいかないと、近づけへんなって感じてました
── 今日もそうですけど、塾ではけっこう皆さん赤裸々にご自身のことを話してくれますよね。まだ数回しか会ってない塾生の前で家族にも言ってないようなことを言えてしまうのって、なぜなのでしょう。
島田:講師に来られる方が、事業のこともご自身のこともかなり腹を割ってお話ししてくださるじゃないですか。ここまで喋っていいんやっていう空気になりましたよね。その上で、塾長から内面をえぐるような質問がバンバン飛んでくるんで、もう逃れられませんよ。でも一番大事なのは、安心安全な場になってるってことですよね。場づくりの上手さだと思います。
米丸:僕は髙津さんの笑顔かなと思います。めちゃくちゃ両手を広げて待ってるんやけど、なんか怖さを感じるんですよ。本気でぶつかりにいかないと、近づけへんなって感じてました。飛び込むしかないぞって。
南部:卒塾してからより一層、これだけ真剣に話せる仲間って本当に貴重だなと感じます。先日読んだ本に、日本人って深い話をしないよねってシンガポールの留学生が書いていて。確かにそうですよね。そういう話ができる場所を求めていたのかもしれません。
米丸:運営の人たちの仲の良さが、安心安全な場の土台になってる感じしませんか?上下関係で指示されて動いてるんじゃなくて、それぞれができることをやって、ミスがあっても助け合っていて。
── 事務局の動きまで見ている俯瞰力は素晴らしいですね。
米丸:権限がないから発言できないとか、自分の責任じゃないから言わんとこうとか、そういうのないですよね。その関係性で仕事ができることが、僕には新鮮でした。その中で学ばせてもらえたから、色んなことを言いやすかったです。塾に行ってから、仕事でも思ったことは口に出すようになりました。
── 役割はあるけど、権限っていう考え方はしていないですね。最近は多様性ってよく聞きますけど、違う立場や考えの人同士を集めるだけでは、多様性があったとしても何も生まれないと思います。お互いに違いを受け入れる姿勢が必要です。補い合いながらやっていく関係性が大事ですよね。こうした新たな気づきをもらえるのも、フラットな関係があってのことですね。
微力かもしれないけど、無力ではないと思えるようになった
宮原:キュレーターは伴走者ですが、まずは自分が行動することを大事にされていますよね。塾に来た人は、自ら行動できる人へと変化していくように思います。
── まさにその通りで、横から口を出すだけの伴走者を私はあまり信用していません。自分が行動してつまずく経験もしないと、実践する人の痛みがわかりません。一歩踏み出すことがどれだけ大変かを身を持って知っているからこそ、伴走者として寄り添えるんだと思います。まずは行動する。塾では、とても大事にしていますね。
川勝:私自身も、考え方は大きく変わりました。塾と出会うまでは仕事とプライベートを分けて考えていたんです。それまでも仕事にやりがいはあったけれど、何かを成し遂げたいとかはなくて、自分は無力だと思ってました。でも、微力かもしれないけど、無力ではないと思えるようになって、小さくてもアクションを起こそうという意識になりました。
米丸:今、仕事は楽しいですか?
川勝:楽しいですよ。でも、ちょっとぬるま湯になりつつある(笑)。人の後押しをすることが私の役割だと思ってやってきたけど、それだけじゃない何かを求めているのかもしれません。
── 何かが動く時なんじゃないですか?さらに一歩、大きく踏み出してほしいですね。今日はけっこう深い話ができたんじゃないかなと思います。卒塾した後も皆さんの学びが続いていて、塾生同士の関係性もより深まっていっていることが、何より嬉しいです。
島田:何か困った時や協力してほしい時、塾の仲間に連絡するとほぼ即答でいいよって返してくれるんです。細かい確認とかもないですね。圧倒的な信頼感がある。塾生ネットワークの広がりが事業にも活きてきたと、最近特に感じます。
南部:うちは、私だけじゃなく家族にも変化が広がっています。コンポストで生ごみから堆肥を作ったり、畑も借りて、収穫したほうれん草を子どもが家の前で売ったり。最近、夫は鶏を飼いたいって言い出しました。小さな一歩ですけど、やってみると楽しいですよね。嫌なことがあっても、それも一つの事象として捉えると、人生何でもおもしろくなるんだなと思います。
── イノベーション・キュレーター塾も変化していくので、塾生のネットワークも立体的になって、新しいことが生まれていくと思います。今日はありがとうございました。皆さん、これからもよろしくお願いします。
聞き手:イノベーション・キュレーター塾塾長 髙津 玉枝
協力:3期 島田 順一さん / 5期 南部 明子さん / 6期 米丸 隼太さん / 京都市 宮原 崇 / 事務局 川勝 美智子
取材・文:阪本 純子 / 柴田 明(SILK)