中小企業診断士 松下晶さんーイノベーション・キュレーター塾生インタビュー
現在、第二期生を募集中のイノベーション・キュレーター塾。
こちらでは、第一期塾生へのインタビューにより、塾の魅力と、塾生のみなさんに起こった変化についてご紹介します。
第五回目のインタビューは、中小企業診断士であり、猟師見習いの松下晶さんにお聞きしました。
自宅の京町家を改装し、「ボンジュール現代文明」として、多様なイベントの開催や、人々の交流の場として運営するなど、ユニークな活動を展開されている松下さん。イノベーション・キュレーター塾でどんな気づきがあったのか、お話をお伺いしました。
■塾に参加したきっかけ:「ソーシャルビジネスについて一度しっかり学びたかった。」
山中: 松下さんは中小企業診断士でありながら、京町家イベントスペース「ボンジュール現代文明」オーナー、猟師見習い、ミュージシャンといろんな顔を持っておられますが、なぜイノベーション・キュレーター塾に入塾しようと思われたのか、教えてください
松下: 若手の中小企業診断士を対象にした、イノベーション・キュレーター塾の説明会に髙津塾長にお越しいただいたのがきっかけです。社会的企業に対する関心も高く、京都府の「ちーびず自立継続支援事業」のという、コミュニティビジネスを支援する事務局の運営と、コンサルティング支援をしていますので、ソーシャルビジネスについて一度しっかり学びたいという想いがありました。
■塾での気づき:「人生に影響を与えるキーワードをいくつか得ました。」
山中: 塾に実際に参加されてどうでしたか?
松下: 人生に影響を与えるキーワードをいくつか得ました。
俯瞰する、ルーツに根ざして活動をする、面白くする、ビジョンを持つ、セクターを横断する、人を巻き込む、などです。
ゲストスピーカーの皆さんは、自身の想いのルーツの部分=「自分事」から事業をスタートされていて、その生き様に非常に感銘を受けました。「面白くやる」というのは、第三回目ゲストのNPOスマイルスタイルの塩山さんがお話されていたことです。若者の就労困難者という難しい課題に取り組まれながらも、周りがワクワクして集まってくる、そんなイベントや場づくりをされていたのが印象的で、自分の仕事にやり方にも影響がありました。また、説得力を持って人に語り魅了できることこそが塩山さんの突出した「人を巻き込む力」なのだと、強い印象を受けました。
■今後の挑戦:「普段の自分がいる場所で見えないものを想像力豊かにイメージできる、そういう状況がもっと増えるような未来を実現したい。」
山中: そんな松下さんの「自分事」は何ですか?
松下: 狩猟と、ジビエ(野生肉の料理)を通じた食育です。これをイノベーション・キュレーター塾でのマイプロジェクトとして取り組んでいます。
山中: 面白い組み合わせですね。そもそも、どうして狩猟に関心をもたれたのですか?
松下: さかのぼると、2011年の東日本大震災が変化のスタートでした。当時は東京で会社勤めをしていて、地震が起きた日に、震災関連死ではないのですが、祖父が亡くなりました。そして、その約1年後に父が亡くなり、身近な二人の死、震災を契機に色々と入ってくる命や環境、食に対する情報に触れるうちに、自分はこのまま東京で働いていていいのだろうかと考えることが増えました。中小企業診断士の資格を取得したのもその頃です。
当時話題になっていたミュージックセキュリティーズの共感融資など、社会と新しい形でつながるシステムにも関心がありました。
また、父が亡くなったことで京都の町家が空き家になり、妻の実家が近いこともあって京都に引っ越しをすることを考えるようになりました。
そんなとき、鹿肉を以前から好きでしばしば食べていたのですが、NHKの猟師特集や書籍に触れて狩猟に対して関心が湧いてきました。とさつの現場にも興味があり、東京では生きている動物と食べ物になったお肉の、その間が全然見えなかった。巧妙に見えず、考えずに済むように作られていると思いました。
震災後まもなく身近な人の死が続き、生きることのありがたみを思うようになったこと、京都の空き家の存在、中小企業診断士の資格を取得したこと、猟師・ジビエ・食育…。いろんなキッカケや情報、条件が合わさり、これらを組み合わせて家族で京都でやっていけないか、そう考えるようになりました。
山中: 人生のパラダイムシフトが起こったのですね。そんな松下さんの実現したい未来はどのようなものですか?
松下: 都会の人が野生を想像できるような、普段の自分がいる場所で見えないものを想像力豊かにイメージできる、そういう状況がもっと増えるような未来です。
東京に自分がいたときにそんな世界に触れるキッカケがあれば、人のつながりも増えるし、知的好奇心も満たされたと思います。そして、知ることにより、どんどん現場に行きたくなり、より広い世界とつながれると思います。
自分も京都に移住して、猟師の免許を取り実際に体験をして、より人生が豊かになりました。何よりも狩猟を通じて出会った人から得たものが大きい。自然に対して接する態度、仕事と狩猟活動とのバランスのとりかた、いろんな人それぞれのあり方に接する事により、自分のあり方も見えてきました。
話が飛ぶかもしれませんが、先日、地下水の本を読んだんです。京都の地下には岩盤が拡がっていて、実に琵琶湖の3分の2の水がたまっているらしいです。そんな話を聞くと、自分のいる場所のまわりの輪郭がみえてきて、今は水の上で住んでいる気分です(笑)
自分にとっては、狩猟を介して山や自然に触れることにより、世界が広がり、非常に豊かになりました。そういう感覚を共有したいと思います。それがクリアになったので、これからはどのようにそれを実現していくのか、後期の残り2回と、今後も継続して考え、取り組んでいきたいです。
■受講をお勧めしたい方:「多様性があったほうが盛り上がる。」
山中: どんな人に塾を勧めたいですか?
松下: 塾には非常に沢山の気づきがありますので、超現実的な方や、ソーシャルな面は全然分からないというような方が来られても面白いと思いますね。違う世界を覗く体験をしてもらいたいと思います。
塾生にも多様性があったほうが盛り上がるのではと思いますし。
もちろん、中小企業診断士など、コンサルティングの現場にいる方がソーシャルの視点を取り入れるのには最適です。
私も、昔から社会性を意識はしていましたが、塾を通して、よりしっかり見るようになりました。クライアントのルーツを掘り下げて、社会に対するインパクトをより意識しながら、もっと多くの人に届ける支援をしなくてはと思うようにはなりました。
山中: 有難うございました。これからのご活躍を期待しています!
聞き手-山中 はるな
京都市ソーシャルイノベーション研究所 イノベーション・キュレーター。広告出版会社での企画職を経て、2009年から京都市まちづくりアドバイザーとして勤務。ファシリテーションマインドとスキルを通して、住民参加型による 区の基本計画の策定、地域活性化のためのプロセスデザイン、コミュニティの対話の場づくりを行う。2015年より現職。「これからの 1000年を紡ぐ企業認定」、「イノベーション・キュレーター塾」事業担当。